当たり前ですが、飲みすぎはNG!とよく言われます。
ちなみに私は、お酒はいつも飲みたいときに、飲みたいだけ飲んでいる。(あまり飲める口ではないので少量です。本当に。)
自分の飲酒量では悪影響はない。常々そう思っていました。本当にそうなのでしょうか?今回は飲酒の健康面への影響について考えていきます。
飲酒は死亡リスク増に
飲酒量が増えれば増えるほど、死亡リスクは高まります。
上のグラフは2018年に、世界的に権威のある医学雑誌Lancetに掲載された論文のグラフ。
横軸は1日当たりの飲酒量で、1は純アルコール量10gです。縦軸は相対リスク。(純アルコール量の計算は次の項で)
「まったく飲酒をしないことが、健康に最もよい」と結論付けられていました。
しかし一概に死亡リスクが高まるといっても、死因は様々なはず。
下のグラフは厚生労働省から発表された、死因の構成割合です。
死因のトップは、言わずと知れたがん。4人に1人はがんで亡くなる。(悪性新生物とは悪性腫瘍のこと。がん、肉腫及び白血病などの血液のがんも含みます。)
飲酒はがんになるリスクを確実に高めます。
国立がん研究センターのがんリスク・予防要因評価一覧を見てみると、一目瞭然。
現時点でがんリスクを確実に高めるのは以下のがん。
- 肝がん
- 大腸がん
- 食道がん
- 胃がん(男性)
- 乳がん(閉経前)
その他のがんに関しては、データ不足となっています。しかし全がんとしては確実なので、今後のデータの蓄積で、がんリスクを高めることが確実ながんは増えるはず。
飲酒は、喫煙と並びがんリスクを高める大きな原因、と私は解釈しています。
一方で死因第2位の心疾患及び第4位の脳血管疾患は、少し様子が異なります。
この二つの死因では、少量の飲酒はむしろ死亡リスクが低くなる結果が出ています。しかし飲酒量が増えれば当然リスクは高まる。
ある研究では、死亡リスクが低い飲酒量は「ロング缶で週5本まで」となっています。
1日ではなく、1週間ですので、くれぐれも勘違いをされないように。なおかつ心疾患と脳血管疾患限定。
多量の飲酒は、依存症にならないまでも、生活習慣にも影響を及ぼします。その他の死因に対しても、直接的だけではなく間接的に関与します。
トータルで考えれば、冒頭のグラフのように、飲酒量が増えれば増えるほど、死亡リスクは高まるのでしょう。
しかし死亡リスクに関係するのは飲酒だけではありません。
喫煙以外にも、食事や運動、ストレス、睡眠、歯の健康など。適度な飲酒量であれば、大きな問題はないのではないかと考えられます。
そして適度な飲酒量は、お酒が飲める、飲めないなどの体質にもよるのではないかとも、想像できる。以降の項で、体質による差も考えていきます。
適度な飲酒量とは
健康日本21(第二次)では
生活習慣病のリスクを高める量を飲酒量として「一日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」となっています。
男女差が倍もあるのは、周りを見渡して、意外。(体重、体脂肪率、肝臓の大きさなどが関係しているようです。)
男女差は別にして、低リスクな飲酒量として、純アルコール量1日平均20g程度ともされています。リスクの高い多量飲酒量は、1日平均60g以上。
純アルコール量の計算式は以下
飲料量(mL)× アルコール濃度× アルコール比重(0.8)=純アルコール量
例)ビールロング缶(500ml)1本の純アルコール量 (アルコール度数5%)
500×0.05×0.8=20g
他のアルコール飲料の例は以下です。
低リスク飲酒量である純アルコール量20gというのは、お酒が強くよく飲まれる方からすると、「なんのこっちゃ」というレベルの量(飲んだうちに入らない量)。
お酒の飲める人、飲めない人
一般的にお酒の飲める、飲めないは三タイプに分けられます。
- 〇お酒に強いタイプ
- △お酒を飲めるが弱いタイプ
- ×お酒が飲めないタイプ
この三タイプ分けは、アルコールが分解されてできた、アセトアルデヒドの分解酵素(アルデヒド脱水素酵素; ALDH)の活性化の差によるものです。
このアセトアルデヒドが顔を赤くする、気持ち悪くするなどの原因になります。
- 〇お酒に強いタイプ→酵素活性型(働きが強い)
- △お酒を飲めるが弱いタイプ→酵素不活性型(働きが弱い)
- ×お酒が飲めないタイプ→酵素失活型(働かない)
一方でアルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素(アルコール脱水素酵素)もいくつかの型があり、この酵素の型により、アルコール依存症になりやすいなどの傾向もあるようです。(厳密にいうと、お酒の飲める、飲めないのタイプ分けはもう少し複雑になりそうです。)
しかし現実的に言っても、三タイプ分けがわかりやすいので、三タイプ分けで話を進めます。
アルコール(エタノール)は体にとって極めて有害な化合物。速やかに分解する必要があります。そして分解してできたアセトアルデヒドも有害な物質。ともに発がん物質に数えられます。
三タイプのうち
×お酒が飲めないタイプ
有害物質であるアセトアルデヒドの分解が進まないタイプ。よってお酒を飲むことは、弱い毒を摂取するのと同じ。
飲まないに限ります。
お酒を飲めるが弱いタイプの人が頑張って強くなるのはよい事か?
次に
△お酒を飲めるが弱いタイプ
私はこのタイプ。
お酒を日常的に飲んでいると、強くなったように感じます。実際に私も、少しお酒が飲めるようになったと実感したことはあります。同感の方も多いのでは。
この理由はアルコール分解酵素とアセトアルデヒド分解酵素以外の別の酵素の働きがあるから。
別の酵素とは、MEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)という酵素群。酵素群ということは一種類ではない。
お酒の弱いタイプの人も、飲酒を頻繁に繰り返していると、この酵素群が活性化されます。 そしてお酒がある程度強くなる。
このように本来からあるアルコール分解酵素以外の別の酵素が、動員されることによって、お酒が強くなることは良いことでしょうか?
美味しいお酒を色々楽しめるようになる。いろいろな宴席で弾けられる。これらはメリットといえます。
デメリットもあります。
MEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)がアルコール分解に多く割かれるようになると、薬が効きにくくなったり、反対に効きすぎたりすることがあるようです。
それだけではありません。
お酒に強いタイプの人に比べて、お酒を飲めるが弱いタイプの人は、飲酒による口腔がんや食道がん等のリスクが非常に高くなるといったデータもあります。
基本的にアルコールは有毒。飲酒量が増えれば増えるほど、死亡リスクは高まります。
私のように、お酒は飲めるが弱いタイプの人が、頻繫の飲酒により、お酒に強くなるのはデメリットの方が大きいようです。
生涯、お酒を楽しむには
最後に
〇お酒に強いタイプ
このタイプの方に、低リスクな飲酒量を当てはめるのは、どうかと思います。
ただ「リスクの高い多量飲酒量は、1日平均60g以上」というのは目安になるのではないでしょうか。
例として、ビールロング缶3本。(あくまでも平均です。これより多く飲んでも、飲まない日があればOK。)
誰でも年齢とともに、お酒が弱くなったと感じる日は来ます。
一つは自分の体からの声に耳を傾ける。つまり翌日に残らない飲酒量で切り上げる。
もう一つは定期的な健康診断での血液検査などの結果を真摯に受け止める。
肝機能の検査項目だけではなく、血圧や血糖値などにも注意を払う。検査結果によってはご自身の飲酒量が適切かを検討する。
エタノールは毒であることを思い出してください。分解酵素も年を取るのです。
適度な飲酒量には、個人差が間違いなくあります。
しかし健康寿命を限りなく伸ばし、生涯にわたりお酒を楽しむには、多少の節制が必要なことも間違いない。
サブタイトルに「一生健康で飲むための必修講義」と。
お酒が大好きで、これからもお酒を飲みながら楽しく人生を送りたいという方。参考にしてください。
皆様も一度、ご自身の飲酒量を純アルコール量で確認してみてはいかがでしょうか。(純アルコール量各酒類のドリンク換算表はおまけで)
適度な飲酒量を心がけ、いつまでも美味しいお酒を楽しみましょう。
おまけ
「ちなみに私は、お酒はいつも飲みたいときに、飲みたいだけ飲んでいる。」「自分の飲酒量では悪影響はない。」と書きました。検証します。
具体的な量(よくあるパターン3例)を紹介します。
- 生ビール1杯とハイボール1杯
- グラスワイン2杯
- 家で缶ビール(レギュラー缶)1本
上の表から計算しました。
- 生ビール1杯とハイボール1杯(生ビールは中ジョッキ、ハイボールのウイスキー量はシングル相当) 13g+10g=23g
- グラスワイン2杯 12g×2=24g
- 家で缶ビール(レギュラー缶)1本 14g
お酒を飲むのは週に1~4回程度で、まったく飲まないこともあります。
1回に飲む量が上のパターンよりも多くなる場合も若干あります。
しかし多めに見積もっても週70g程度かな。1日あたり10g。
もちろんリスクが0とは言いません。しかし自分の飲酒量ではほぼ悪影響はないという結論を確認しました。