日常生活が運動になる!

今回は運動というよりは身体活動についての話です。ホテル客室清掃員の健康状態の研究から得られた重大な?発見を紹介いたします。

私自身も年をとり、いずれは体力や筋力の衰えに直面していきます。自分自身の介護予防にどう取り組んでいくかを考えた時に、明確な方向性を示してくれた重大な?発見です。

ホテル客室清掃員

身体活動(physical activity)とは?

身体活動は、エネルギー消費をする骨格筋の収縮活動によりもたらせるあらゆる身体的な動きと定義されています。つまりスポーツ・運動だけではなく移動・仕事・家事といった日常生活での活動も含まれるのです。

健康日本21であげられている、健康寿命を延ばす六つの要素の一つである「身体活動・運動」にあたります。
日常生活で十分な身体活動があれば、運動の代わりになります。

重大な?発見とは?

アメリカの7つの異なるホテルで働く84人の女性客室清掃員を対象にした研究からの発見です。対象者を二つのグループに分け、そのグループの間で日常の清掃作業によって、体重や血圧などの健康に関する指標への影響の受け方に違いがあったというものです。

ホテルの客室清掃業務は、なんとなく想像ができると思うのですが、ベッドメーキングやバスルーム清掃などもありかなり重労働ではないでしょうか。毎日の清掃作業自体が、健康のための推奨運動量基準を十分に満たしています。

ところがこの研究の事前のアンケート結果では、対象となったほとんどの女性客室清掃員は運動をしていないと答えていました。つまり日常的に、推奨されている以上の運動量をこなしているにもかかわらず、本人たちには運動をしている意識はまったくなかったのです。

客室清掃業務は立派な運動になり、アメリカ公衆衛生局の推奨運動量の基準を満たしている。この活動的な生活による健康効果が期待できる。
グループⅠ(上記の説明をする。)
グループⅡ(健康のために運動がいかに重要であるかの説明のみをする。)

それぞれのグループ別に説明をし、4週間経過後に健康状態の診査をしました。

グループⅠ
体重↓、体脂肪↓、血圧↓、BMI(ボディマスインデックス)↓、ウエストピップ比↓
この仕事が以前より好きになった

グループⅡ
変化なし

4週間という比較的短い期間なので、特別な説明をしなかったに等しいグループⅡでは変化がなかったのは当然だと思います。同じく短い期間にもかかわらず体重や血圧などが有意に下がったグループⅠは驚きに値します。

仕事内容もプライベートの生活も何も変わりありません。唯一変わったのはMind-set(マインドセット)だけです。マインドセットとは経験、教育、先入観などから構成される思考様式、心理状態のことで、暗黙の了解や思い込み、価値観、信念などが含まれます。プラスのマインドセットとマイナスのマインドセットがあります。

今回の場合、簡単に表現すると「気持ちの持ち方」が一番しっくりきそうです。もちろんプラスのマインドセットです。

「ものごとについてどう考えるかによって、ものごとから受ける影響は変化する。」というのが重大な?発見です。(「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」より)

同じ行動をとったとしたとしても
運動と考えることによって健康効果が表れる。(プラスの効果)
負荷の強い作業をすると考えて体に負担が生じる。(マイナスの効果)
どう思うかによってどちらの効果が表れるかが決まる。

言い換えると「思った通りになる」のです。


4,5年前に読んだ2つの書籍がこの研究結果を紹介していたのに気がつき、その時に興味を持って調べました。
以下がその2つの書籍です。
スタンフォードのストレスを力に変える教科書 スタンフォード シリーズ
座らない!: 成果を出し続ける人の健康習慣

引用された研究結果(論文)は以下です。
Mind-set Matters: Exercise and the Placebo Effect
 Mind-set(マインドセット)は先程説明いたしました。
 Exerciseは運動です。
 Placebo Effect(プラセボ効果)とは、薬としての成分は入っていない偽薬を飲んでも、本物の薬を飲んだ時と同じような効果が出ることです。

私は40歳代前半からスポーツクラブ通いをはじめ、そこそこ定期的な運動はしてきたつもりです。自分で勉強をしてさまざまなトレーニングにも取り組んできました。

その中で日常生活でも十分に運動になる部分があるだろうと、うすうす感じていました。この研究結果は私自身の漠然とした思いを、明確に言語化してくれたものだと強く心に響きました。

日常生活が運動になるのです。

重大な?発見のもう一つの解釈

私はこの重大な?発見に対して、別の側面から解釈を広げていきたいと思いました。ここからは私の個人的な解釈になりますので、眉に唾をつけながらお読みください。

筋肉に注目

私はこの研究結果について、筋肉の使われ方に注目いたしました。

トレーニングをする時の姿勢と日常生活たとえば掃除などをする時の姿勢の違いを思い浮かべてください。
中には同じだという人もいらっしゃるかもしれませんが、異なる場合が多いはずです。

トレーニングをする時の姿勢は良い姿勢をとるはずです。掃除などの時はあまり姿勢を気にしないはずです。

トレーニング時の良い姿勢とは?
具体的には体幹に力を入れ、上半身もしくは下半身に力を入れられるように準備をします。つまり背筋や腹筋、腸腰筋などの骨盤まわりの筋肉に適切な力が入った状態です。
一方日常生活では、体幹の筋肉に力を入れる意識は少ないはずです。

同じ客室清掃業務をした場合、この業務は運動であると意識すると、そうでない場合に比べて体幹の筋肉はより使われると思います。そして体幹だけではなく、実際に動かす手足にも意識的に力がこもるようにもなるのではないでしょうか。

運動であると意識することにより、筋肉の活動量が増えるのです。
(筋肉は意識することにより、より効果的に鍛えられます。)

体重や血圧などの健康に関する指標への影響の受け方の違いは筋肉の活動量の違いではないか?
私はホテル客室清掃員の健康状態の研究結果は、筋肉の活動量の増加である程度説明できるのではないかと考えています。

また長期的にみると、体幹に力を入れることが、マイナスの効果となる体のさまざまな部分(腰や膝など)への障害を軽減するのに役立つとも思います。

重大な?発見の日常生活への応用

移動・仕事・家事といった日常生活を可能な限り、効果的な身体活動にするのです。

日常生活が運動になると意識をする

(姿勢を意識することになる)

必然的に体幹の筋肉に必要な力が入る

様々な動作で筋肉の活動量が増え、関節などの負担が減る

健康効果↑・体への負担↓

具体的には個々の生活の中で工夫をしていただくことになります。

地下鉄などの交通機関を利用しての移動は、身体活動を増やす絶好の機会です。私は基本的には階段を利用します。姿勢を正して、しっかりと足の筋肉を意識しながら昇り降りをします。

普段の何気ない動作でも気を配り、たとえば少し低い場所からものをとる時は腰をかがめるのではなく、腰をしっかりと落とします。つまり軽くスクワットをするイメージです。重いものを移動、お風呂掃除(ごくたまにします)・・・ でも家ではほとんど身体活動をしていないことに気がつきました・・・

仕事は個々に違いがあり、一概には言えませんが、移動と家事は間違いなく運動になるはずです。

ここまで書いていて、ひとつ思い出した身体活動があります。それは雪かきです。

診療室前の雪かきをしなければならないほどの積雪は、数年に一度程度ですが、いざやるとなるとかなり重労働です。体幹にしっかりと力を入れて、足腰を踏ん張り、スコップでなるべく多くの雪をすくい運びます。全身の筋肉をまんべんなく使うのです。

雪かき

雪かきは最高の筋トレだと思ってやるようにしています。

スポーツクラブ1回分の筋トレだと思う。しかも無料(ラッキー)。
(プラスの効果)良い運動になる。筋力アップにつながる。
今年の冬はついていない。診療前に雪かきをするなんて最悪だと思う。
(マイナスの効果)疲労困憊(こんぱい)。腰や肩、肘などの関節を痛めたりするかもしれない。

運動になると意識する
健康効果が期待できる。体の障害への影響を軽減できる。

運動になると意識しない
健康効果があまり期待できない。体の障害への影響が出る可能性が高くなる。

「ものごとについてどう考えるかによって、ものごとから受ける影響は変化する。」
今後もこの言葉を噛みしめて日常生活を送っていきたいと思います。

「思った通りになる」のです。

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