前回は、むし歯ができるメカニズムについて説明をしました。

 

脱灰=再石灰化 → むし歯になりません

でも

脱灰>再石灰化 → むし歯になります

 

ということなので、脱灰が多くならないようにするには、日常生活でどのように気をつけるとよいかを書きました。

脱灰を少なくするだけでなく、再石灰化を増やせばむし歯になりにくくなるはずです。

今回は「最も効果的なむし歯予防法」と題して、再石灰化をアップする方法を紹介していきます。

ライオン歯科衛生研究所統計資料を改変

上の図のオレンジの折れ線グラフは12歳児(中学1年生)のむし歯数を表しています。約30年前は一人あたり4.85本だったのが、2013年(平成25年)は1/4以下に減っています。(2016年には0.84本にまで減少しています。なんと1/5以下です。)

12歳児だけではなく、乳幼児、小学生、高校生でも30年くらい前をピークにむし歯になっている人は明らかに少なくなっています。日常の診療でも、大学を卒業して間がない頃(大学病院を退職してからの勤務医時代で1988年~)は、むし歯の治療ばかりをしていた記憶があります。

現在では、むし歯の治療をしない患者さんの方がむしろ多いくらいではないかと思います。いずれにしても、むし歯になっている人やむし歯の本数が減っているのは現実です。

一方、青の棒グラフは、30年前には非常に低かったのですが、現在はとても高くなっています。むし歯の減少と反対に増加しているものは何でしょうか?

 

それは、日本国内における歯みがき剤の販売量のうちの、フッ素入り歯みがき剤の割合です。30年前はほとんど売られていなかったものが、現在ではほとんどの歯みがき剤にフッ素が配合されています。

「歯を白くしたい!」と思い、ホワイトニングをうたっている歯みがき剤を選んでも、「歯肉を引きしめたい!」と思い、歯周病予防の歯みがき剤を選んでも、フッ素配合の歯みがき剤であることがほとんどであるということです。

 

フッ素配合歯みがき剤が普及するにともなって、むし歯の数が少なくなっています。これは日本だけではなく、世界的に見られる傾向です。北米、オーストラリアやヨーロッパの一部の国々と比べると、日本でこのようにむし歯が少なくなったのはとても遅いくらいです。

 

1994年にWHO(世界保健機構)において

「先進国(日本は入っていません)での小児のむし歯が急激に減少したのは、フッ素配合歯みがき剤の普及が最大の関連因子である。」との疫学調査の結果をまとめました。

そして、フッ素配合歯みがき剤がむし歯予防の最有力手段として強く推奨しました。

以下が英文ですが全文です。(英語が得意な方はお読みください。)
Fluorides and Oral Health – WHO(1994)

 

Toothbrush with fluoride toothpaste

最初のグラフをみると1997年くらいから急激にフッ素配合歯みがき剤のシェアが増えています。これは1994年に出されたWHOの提言により、日本でのむし歯予防に対する考え方が砂糖摂取の制限より、フッ素配合歯みがき剤にシフトしたことによります。

 

世界的にむし歯が減少した要因は他にもありますが、フッ素配合歯磨剤の使用が最も貢献していると、この1994年の時点で結論が出ていた訳です。その後の日本でのむし歯の減少が、さらにこの結論を裏付ける結果になっています。

 

 

フッ素はむし歯予防になることは、皆さまもなんとなくご存知だと思います。

ではなぜ、フッ素はむし歯予防に役立つのでしょうか?

 

①歯を強くする

②再石灰化を促進する

③抗菌作用がある

以前からこの三つの理由が挙げられてきています。

フッ素配合歯みがき剤では、このうち「②再石灰化を促進する」という理由がポイントになります。

 

最も効果的なむし歯予防法は

「再石灰化を促進するので、フッ素配合歯みがき剤を使用すること」と言いたいのですが

もう少し続きがあります。

 

市販のフッ素配合歯みがき剤には

フッ化ナトリウム(NaF

モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP

フッ化スズ(Sn2F)-あまり一般向けには使用されていません。

のいずれかのフッ化物が配合されています。

 

日本では1,000ppm(0.1%)が上限になっていますので、一部の子供用の製品を除いてどの製品にも900ppm~1,000ppmのフッ化物が入っています。

*「フッ素」という言葉を使用しておりますが、フッ素は元素名ですので、正式には「フッ化物」と言います。

 

濃度が同じであればどの歯みがき剤を使っても、むし歯予防効果は同じと考えられます。ただ、同じ濃度の歯みがき剤でも使い方によって効果に大きな違いが出てくるのです。

 

歯みがき後の洗口は何回位しているでしょうか?

理想的には1回程度です!(しかも少ない量の水で)

「少量洗口」

フッ素配合歯みがき剤を適切な量つけ、時間をかけて丁寧にブラッシングをしても

何回も洗口をして、有効な成分まですべて洗いながしてしまうと、再石灰化を促進することはあまり期待できません。

 

歯みがきが終わった後に歯の表面、舌、歯肉、頬や唇の内側にわずかに残っているフッ素が再石灰化を促進するのです。

むし歯予防効果は歯みがき後の洗口の仕方によって左右されます。

 

最も効果的なむし歯予防法は

「再石灰化を促進するために、フッ素配合歯みがき剤を使用して歯みがきをし、少ない水で最小限の回数で洗口(少量洗口)する。」

ということになります。


日本歯科医師会の情報提供サイト「テーマパーク8020」でフッ素(フッ化物)に関するいろいろなQ&Aを読むことができます。参考にしてください。


 

そうはいっても、口の中に歯みがき剤の味、香りや泡が残ると、何回も洗口をしたくなります。

歯みがき後の洗口回数をできるだけ少なく抑えるには、歯みがき剤自体が味や香りが少なく、泡立ちにくい製品の方が有利です。

この「チェックアップスタンダード」という歯みがき剤は、低香味性と低発泡性を特徴とし、少量洗口のしやすさをコンセプトにしています。

発売されたのは1996年で、当院でも発売間もない頃より院内販売をはじめ、自身でも使用をしております。気がつくとかれこれ20になります。

患者さんによっては「インパクトがない」「あまりサッパリしない」などの感想を持たれる方も少なからずいらっしゃいました。

ただ、この特徴が少量洗口に適しているのです。

 

他の製品でもフッ素濃度は同じですので、洗口に気をつけていただければ同じようなむし歯予防効果は得られると思います。

 

「最も効果的なむし歯予防法」という言葉を使いました。この「最も効果的」の意味は効果が高いだけではなく、家庭で誰でも手軽に使うことが出来るという意味も含まれています。

フッ素配合歯みがき剤の使用は、生涯にわたり継続していくべきむし歯予防の基本となる方法です。

 

魅力的なパッケージやコピーなどに惑わされて、フッ素が配合されていない歯みがき剤に手を伸ばすことがないことを願っております。

 


平成29年3月17日に厚生労働省より以下のような通知がありました。

フッ化物を配合する薬用歯みがき類の使用上の注意について

■今般、フッ素として1000ppm(0.10%)を超えるフッ化物を配合する薬用歯みがき類(ブラッシングを行うもので、液体の剤形を除く)が、医薬部外品として承認され、併せて、日本歯磨工業会により「高濃度フッ化物配合薬用歯みがきの注意表示等について」(自主基準)が策定されました。 ■厚生労働省からは、これらを踏まえて、1000ppmを超えるフッ化物を配合する薬用歯みがき類について、6歳未満の子供には使用を控えるなど、使用上の注意に関する取り扱いを示した通知が発出されましたので、お知らせ致します。


ブログ中で、日本では1,000ppmが上限であると書きましたが、今後は1,500ppmのフッ化物が入った歯みがき剤などが販売されるようになると思います。ただ、海外では3,000ppm程度の製品もあります。まだ、比べると低めの基準ではあります。