歯みがきができていれば、むし歯にならないか?

むし歯を予防するには?

まず、一番に考えられるのが歯みがきです。もちろん、歯みがきが必要なのは言うまでもありません。

では、歯みがきが完ぺきにできていれば、むし歯にならないかというと

答えは「いいえ」です。

歯みがきをまじめに、がんばって、1日3回していても

むし歯になることはあります。

このことは、むし歯ができるメカニズムを知ると理解できます。

キーワードは「脱灰(だっかい)」」」」と「再石灰化(さいせっかいか) 」です。

脱灰

むし歯菌(ミュータンス菌)が作った酸によって、歯からミネラルが溶け出すこと。

再石灰化

だ液中のミネラルが歯の結晶に戻ること。

歯の表面ではだ液中のミネラル分(カルシウム、リン酸)が浸透したり、歯の結晶であるミネラル分(カルシウム、リン酸)が溶けだしたりが繰り返されています。

だ液や歯の表面はpH7前後のほぼ中性の状態です。

食事をしたり、間食をしたり、ジュースを飲んだりすると、その直後からプラーク中のむし歯菌(ミュータンス菌)が酸を作ります。これにより歯の表面では酸性になり、pH5.5あたりを下回ると脱灰が起こります。

その後は、だ液がむし歯菌の作った酸を中和します(緩衝(かんしょう)作用)が、この脱灰は飲食が終わってから20分程度は続きます。

酸がなくなり、歯の表面が中性にもどると、今度は再石灰化がおこります。私たちの口の中ではこの脱灰と再石灰化がくり返されています。このくり返しで、脱灰の方がまさってしまうとむし歯ができてしまいます。

パターン1

上の図の赤枠の中を見てください。

ピンク色の部分が朝食、昼食、間食と夕食時の脱灰が起こっている時間です。

それ以外の青色の部分が再石灰化している時間です。

ピンク色(脱灰している時間)に比べて青色(再石灰化にしている時間)が多いです。このような生活パターンはむし歯になりにくいといえます。

パターン2

次の赤枠の中はどうでしょう。

同じように三食と1回の間食なのですが、ピンク色の脱灰している時間が長いです。お薬をたくさんの種類飲んでいる高齢者などで、だ液が少なくなっている人のパターンです。だ液がむし歯菌の作った酸を中和します。だ液が少ないと、酸がいつまでも歯の表面にとどまり、脱灰が長く続きます。

パターン3

最後の赤枠の中はどうでしょうか。

1日のうちに何度も間食をしたり、アメをよくなめたりしていると、ピンク色の脱灰している時間がとても長くなります。また、寝る前に飲食をすると、寝ている間はだ液が出ないため寝ている時にずっと脱灰が起こってしまいます。

一番目のパターンは脱灰している時間が短いので、むし歯になるリスクは低いといえます。

二番目と三番目のパターンは脱灰している時間が長いので、むし歯になるリスクが高くなります。

一番簡単な結論です

脱灰=再石灰化 → むし歯になりません

脱灰>再石灰化 → むし歯になります

極端な言い方をすれば

歯みがきをしなくても、脱灰=再石灰化 ならばむし歯にはならないということです。

もちろん、歯みがきをしてむし歯菌がいるプラークをきれいにおとした方がむし歯予防になります。しかし最初に書いたように、歯みがきが完ぺきにできていてもむし歯になることがある理由は、間食などが多いと 脱灰>再石灰化 の状態になるからです。

食事の時も脱灰するので、食事の回数を少なくしたり、食事の時間を短くした方が良いのではという考え方もあるかもしれません。

しかし、パターン1を見ていただければわかると思いますが、朝昼晩の三食と1回の間食をしたとしても、それ以外の時間は再石灰化をしているわけですから、食後の歯みがきをきちんとしていれば、そう簡単にはむし歯になることはありません。

朝食、昼食、夕食はむし歯のことを気にせず、栄養のバランスを考えていろいろな食材や料理をよくかんで、家族との会話を楽しみながらゆっくりと食べることが大切です。

やはり、パターン3のように三食以外の時間に脱灰がつみかさなると、とてもむし歯ができやすくなるのです。

では具体的にどのようなことが脱灰を積みかさねていくのでしょうか?

アメをなめている時は脱灰しています。

乳歯やはえてまもない永久歯は溶けやすいので注意が必要です。

ご高齢の方で口がかわくから、喉がいがいがするからといって、のど飴をよくなめるとおっしゃる方がいます。

のど飴もアメですから、ひんぱんになめるとむし歯になります。

定期的にクリーニングに来ている患者さんで

突然、何本もむし歯ができた方がいらっしゃいました。

いろいろ聞いてみたところ、喉の調子がよくなかったので、1日何回ものど飴をなめるようにしていたとのことでした。

極端な例ですが、数ヶ月でむし歯が何本もできてしまうこともあります。

ペットボトルはとても便利です。私もよくペットボトル飲料を飲みます。(ほとんどが水かお茶です)

持ち運ぶことができ何回にも分けて少しづつ飲むことができます。水かお茶であれば問題はないのですが、それ以外の飲料の場合は問題になります。

ジュースやスポーツドリンクなどの場合は気をつけないといけません。

キャップをしめれば持ち運べるので少しづつ何回にも分けて飲むと、脱灰が長時間に渡って続くことになってしまいます。

DVDを観ながらポテトチップスを食べているのでしょうか?

このようにながら食べは危険です。

テレビを観ながら、本を読みながら、仕事をしながら、勉強をしながら、仲間と話をしながら・・・

〇〇しながらの飲食は脱灰する時間が長くなるので、なるべく避けたいものです。

脱灰が多くなる生活パターン

・ひんぱんな間食

・ペットボトル

・砂糖の入ったコーヒー(缶コーヒーなど)

・のど飴、アメなど

・ながら食べ

・寝る前の飲食(寝ている間はだ液がでません。絶対にやめましょう!)

上記のような、脱灰が多くなる生活パターンを避けていくことが、むし歯予防の大切なキーポイントです。

でも、考えてみると誰しも日常的にやっていることもあるとは思いませんか?

私自身も過去には何度もやったことがあります。

要は、これらの行動が習慣になってはいけないということです

では、どれくらいの頻度であれば習慣ではないのでしょうか?

一概には決められないように思います。

習慣とは

・日常の決まりきった行いのこと。長い間そうすることによって、そうすることがあたかもきまりのようになったこと。

・(心理学用語)反復によって習得し、少ない心的努力で繰り返せる、固定した行動のこと

とあります。

「何か特別なきっかけや理由がないのに行動してしまう」というような事でしょうか。

お菓子を食べながらの、たまの女子会などは全く問題ないと思います。

(あまりにもひんぱんな場合は問題になります。)

私自身も1~2週間に1度くらいは、お菓子を食べながらのカフェ仕事をしています。

本当に風邪をひいて、のどが痛いときにのど飴をなめていけない訳がありません。

どんなことでも、たまにであればむし歯を心配する必要はありません。

水やお茶以外の飲食をしている時は、必ず脱灰が起こっています。

三食以外の時はこのことを意識していただくと良いと思います。

お口の中にむし歯菌がいると、必ずむし歯になるわけではありません。むし歯予防はちょっとした心がけ次第で簡単に実行できます。

次回は再石灰化を多くする方法についての話です。

※脱灰と再石灰化のイラストは日本ヘルスケア歯科学会の「歯の病気のやさしい説明」のスライドを改変して使用しております。

※上記のイラストは日本学校歯科医会「むし歯予防大作戦」のスライドを改変して使用しております。

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