このシリーズの最後です。歯肉縁下のプラークコントロールについての話です。

歯周病も当然ですが治療が必要な病気です。

どの様な治療が必要かというと、これも当然ですが歯周病の進行程度により変わります。

軽症であればスケーリングといって、歯石や歯垢(プラーク)を簡単に除去する治療を行います。

少し進行するとスケーリング・ルートプレーニングという歯周ポケットの中を含めて歯の表面についている歯石などをきれいに除去していく治療を行います。また、咬合調整といってかみ合わせを調整することもあります。

さらに重症化した場合は、歯周外科処置といって歯肉を切るような処置をしたりすることもあります。抗菌剤を飲んでいただいたり、弱った歯を連結するような場合もあります。

 

今回の歯肉縁下のプラークコントロールというのは、これらの治療が終了した後に行う処置と考えていただけると良いと思います。

 

「2017-11-12 やはり歯周病はなおらない? Part2」で書かせていただいたように、歯周病は治ること(治癒(ちゆ))を目指すのではなくコントロールにしていくことを目指します。

一番大切なことは、ご家庭でセルフケアを徹底的に行うことです。初期の歯周病であればセルフケアだけで十分にコントロールできることもあります。(本当に進行の程度が初期かどうかは診断をしてもらう必要があると思います。)

歯周ポケットが4mm以上のところがある場合は、プロフェッショナルケアつまり歯科医院での処置が必要になります。

歯肉縁下のプラークコントロール=歯科医院で行うプロフェッショナルケア

ということです。

 

むし歯はリスクの高い小児や高齢者を除いて、セルフケアで十分予防ができます。

歯周病は残念ながらセルフケアだけでは対応できない病気です。

 

ではなぜ4mm以上の歯周ポケットがある場合はプロフェッショナルケアが必須なのでしょうか?

 

「2017-10-24 やはり歯周病はなおらない? Part1」で「歯周病菌は偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)といって酸素を嫌う種類の細菌である」と書きました。歯周病が進行して歯周ポケットが4mm以上になってくると、酸素が届きにくい環境ができてしまいます。よって、上の図のように歯周病菌などの良くない菌が歯周ポケットの中で増え、さらに歯周病が進行していくという悪循環におちいります。

スケーリングやスケーリング・ルートプレーニングなどの処置をしてプラークや歯石を取り除くと、歯肉に炎症を起こす原因がなくなるので歯肉の炎症が収まり歯周ポケットも浅くなります。

一度、プラークを除去してもすぐにプラークは付き始めるのですが、歯周ポケットが浅いと偏性嫌気性菌は住みにくいので比較的悪さをしない菌の割合が多くなります。

このような状態になれば、歯肉縁上のプラークコントロールつまり丁寧な歯磨きと歯間ブラシ・フロスを十分に実行していただくことにより、健康な歯肉を維持していくことが可能です。

ところが、4mm以上の歯周ポケットが残っていると、歯肉縁上のプラークコントロールだけでは不十分な可能性が高くなります。いくら歯ブラシの毛先を歯周ポケットに入れるように工夫して歯磨きをしたとしても、歯ブラシのCMのアニメーションでイメージできるようなきれいにポケットの中のプラークを取ることは難しいのが現実です。

きれいに磨いていたとしても3ヶ月程度たつと

上の図のように、歯肉の炎症がなくきれいに見えても歯周ポケットの深い部分は元のように歯周病菌(偏性嫌気性菌)の割合が多くなってきます。

このような状態が続くと、場合によっては元の木阿弥になりかねません。

よって、ある程度歯周病が進行している場合は3ヶ月に1回程度の歯肉縁下のプラークコントロールが必要という結論になります。

 

皆様方の中に3ヶ月に1度クリーニングに来てくださいと勧められた方が多いと思います。

これが3ヶ月に1度の根拠です。

そうは言っても必ず3ヶ月に1度でなくても、4ヶ月や半年に1度でも大丈夫な方もいらっしゃいます。反対に1、2か月に1度のほうが良い方もいらっしゃいます。

クリーニングの間隔は歯周病の進行度合いやセルフケアの達成度合いなどによって決めていきます。

歯周病が軽度で歯磨きが上手な方は半年に1度で十分だと思います。逆に歯周病がかなり進行している場合はセルフケアが完璧でも1、2か月に1度を勧めています。

 

では、3ヶ月に1度のクリーニングとは具体的に何をするのでしょうか?

SPT(歯周病安定期治療)

サポーティブペリオドンタルセラピー(Supportive Periodontal Therapy)を行います。

SPTは日本歯周病学会「歯周病治療の指針2015」には以下のように書いてあります。

「歯周基本治療,歯周外科治療,口腔機能回復治療が終了し,歯周組織のほとんどは治癒したが,病変の進行が休止した歯周ポケットが残存した場合,歯周組織を長期にわたり病状安定させるための治療である。プラークコントロール,スケーリング・ルートプレーニング,咬合調整などの治療を中心に原因因子の除去に努め,併せて口腔衛生指導や再動機づけなどを行う。」

簡単に言うと

「進行を食い止めるため(コントロールをするため)に、歯面や歯周ポケットの中をクリーニングすると同時に、よく磨けていないところを指摘させていただき、より良いプラークコントロールを目指していただく。」でしょうか。

 

part1~3(歯周病予防)のまとめ

①毎日の丁寧な歯磨きで歯肉の炎症を防ぐ。
 歯磨きをしているのと歯磨きが出来ているのは残念ながら違います。歯科医院で歯磨き指導を受けることも大切です。
②歯間ブラシやデンタルフロスを使用する。
 隣接面のプラークコントロールを十分に行うためには必要です。
③定期的に歯科医院でクリーニングを行う。
 すべての方が必要ではありませんが、セルフケアに自信がない方や歯周病が進行している方は必ず必要です。

 

昔のCMで「リンゴをかじると歯ぐきから血がでませんか?」というのがあったのを思い出しました。

「リンゴをかじらなくても歯磨きの時に血が出ませんか?」

「歯肉から血が出る」というのは歯周病のとても重要なサインです。

自分で判断をせずに歯科医院を早めに受診することお勧めします。

 


お口の中に歯周病菌がほとんどいない場合は歯周病になるのでしょうか?

まれにですが、歯磨きが不十分で歯肉に明らかに炎症があるのですが、レントゲン写真を撮ってみると、ほとんど骨が溶けていないご高齢の方がいらっしゃいます。

たぶん、歯周病菌がとても少ないのではないかと思われます。

ただ、このようなケースはとてもまれなことです。