今回は歯をみがく時の強さ(ブラッシング圧)についてです。もちろん強くみがくのはNG!
では強くなければ、OKなのでしょうか?
2018-12-25 歯みがきが苦手な方へ の続き
でも取り上げた話題ですが、今回は少し発展させていきます。
なぜ強くみがくのはNGか?
きれいにみがこう、真剣にみがこうあるいは急いでみがこうとすると、どうしても力が入りがちです。
冒頭の写真のように歯ブラシを握りしめてみがくと、さらに強いブラッシング圧でみがきがちに。男性の方が強くみがき過ぎている傾向はあると感じています。
なぜ強くみがくのはよくないのでしょうか?
- 歯肉を傷つける。場合によっては歯肉が下がる原因にもなる。
- 歯が削れる。歯肉が下がり歯根が出ている場合はとくに要注意。
- きれいにみがけていない。(強いブラッシング圧でみがく方は、比較的大きなストロークで数本まとめてみがく傾向があります。歯と歯の間や歯が重なりあっている部分にみがき残しが目立ちます。)
- 歯ブラシの傷みが早い。
上の写真の歯ブラシは強いブラッシング圧で傷んだ歯ブラシのイメージです。このように傷んだ歯ブラシを使い続けると、さらに歯みがきの効率は落ちます。
強くみがくことはメリットが小さく、デメリットが大きいのです。
わかっているがどうしても力が入ってしまうという方もいらっしゃいます。解決法の一つに歯ブラシの持ち方があります。
この写真のように歯ブラシの柄を握りしめるのではなく、指先で持つようにすると力は入りづらくなります。ペンを持つときのイメージ。
カチッと鳴る歯ブラシを使ってみて
当医院からのお知らせでも紹介した「カチッと鳴る歯ブラシ」です。力を入れすぎると、「カチッ!」音で知らせてくれる画期的な歯ブラシ。私も約1ヶ月間使用してみました。
適切なブラッシング圧は150g前後で、200gを超えない程度が目安です。メーカーに問合せたところ、音が鳴るブラッシング圧は200g。適切な設定です。
1回の歯みがきで、1、2回は「カチッ!」音が。急いでみがくともう少し回数が多くなることもありました。
自分はブラッシング圧がやや強めであると自覚できました。さらに音が鳴る場所にも明確な傾向があります。どこの場所でもブラッシング圧は同じくらいになるように気をつけていたにもかかわらず・・・
音が鳴りやすい場所は、利き手と反対側の前歯と奥歯の中間(上図の赤い所)です。もちろん内側ではなく外側。他の場所も鳴ることがない訳ではありませんが、ここは明らかに頻度が高かった。私は右利きですので、左の犬歯から小臼歯にかけての外側になります。
無意識に歯ブラシを口の中に入れる箇所が、この利き手の反対側の前歯と奥歯の中間です。
あまり歯みがきが得意ではない方でも、唯一きれいにみがけていると感じる部分と実は合致します。
200gを超えると、即アウトとではないはずです。200gは重要な目安と認識していただければよいと思います。
1回の歯みがきで「カチッ!」「カチッ!」と音が鳴り続けるようであれば、ブラッシング圧が強すぎるので弱めることをお薦めします。
ブラッシング圧の強さを確認するために、この歯ブラシを試してみてはいかがでしょうか。
クリニカNEXT STAGE ハブラシ
強くなければOKではない!
一般的には強いブラッシング圧がよくないことがかなり浸透している。日々の診療でお口の中を見てそう感じます。
しかしブラッシング圧が強くなければOKではなく、適切なブラッシング圧が大事です。
150g前後で200gを超えない程度のブラッシング圧。
近年気になっているのは、ブラッシング圧が弱すぎるのではないかと感じる人が増えていることです。とくに中年期以降の女性にその傾向が見られます。
なでるようにみがく。
軽く掃くようにみがく。
自分の歯みがきをこう表現される場合は要注意です。ブラッシング圧が弱すぎる可能性が。
何がいけないのでしょうか?
歯肉も歯も傷つけません。歯ブラシも痛みにくいです。
でも圧倒的にみがけていない。つまり肝心の歯垢がとれていません。歯肉に炎症があります。
みがいていない場所は、普通は歯垢が目に見えてついているものです。
歯垢はほとんど目につかないけれど、歯肉は赤く腫れぼったい。(表現が難しいのですが、間違いなくみがいているのはわかる。でも何だかよくみがけていない。そんな状態です。)
このような方に歯みがきの仕方を伺ってみると、「なでるように」あるいは、「軽く掃くように」と言われます。実際に歯みがきをしていただくと、弱い。しかも、かなり。
つまり歯みがきしているが、みがけていない。
先ほどの「カチッと鳴る歯ブラシ」を1ヶ月使っていて、1度も音が鳴らなかった場所があります。それは上図のように、利き手側の奥歯の内側です。私の場合は右側の上下奥歯の内側。
この利き手側の奥歯の内側というのは、みがき残しが多い場所の一つです。また手首を返すようにしてみがかないといけないので、歯みがきがやりにくい場所の筆頭でもあります。
以前から利き手側の奥歯の内側がみがきにくいので、注意をするよう頻繁に指導してきました。
実は単にやりにくいだけではなく、それにプラスして力が入っていない。ブラッシング圧というもう一つの要素があるのでは。
他の場所が適切なブラッシング圧でも、この部分だけ弱すぎる場合もあるのではないかとの推測もできます。
歯みがきが得意ではない方でも、唯一きれいにみがけている部分がある。
これと真逆のこともあるのかもしれません。
ブラッシング圧が弱すぎることも、歯みがきができていない一つの原因です。(もちろん強すぎるのはよくありません。念のため。)
血が出るのはみがけていないから!
ブラッシング圧が弱めの方には、もう少し強くみがくように指導します。
すると「強くみがくと血が出るのです!」と。
確かに血が出ることは気持ちのよいことではありません。強くみがき、傷つけて血が出たと思われるのも当然です。
以前のブログでも紹介している図です。
歯みがきの時に歯肉から出血するのは、歯垢や歯石がついているところの歯周ポケットの内側の傷からの出血。つまり、よくみがけていない部分の歯肉の内側から血が出るのです。
歯ブラシが強くあたり、歯肉の外側を傷つけて血が出るのではありません。
傷ができる原因は、お口の中の細菌表面の物質や毒素です。歯に歯周病菌に限らずお口の中の細菌が多く付着していると、歯肉が炎症をおこし傷ができる原因に。歯垢はまさにお口の中の細菌の塊です。
血が出ないようにするには、傷をふさがなくてはなりません。傷をふさぐには原因を取り除くことが肝心。つまり歯ブラシでしっかりと歯垢を落とす。
歯ブラシで歯垢を落とすには、適切なブラッシング圧でみがく必要があります。
血が出ると歯みがきを避けてしまう気持ちはわかります。でもそれでは悪循環。
辛抱してみがいていると、数日で血は出なくなります。
血が出るところはよくみがこう!
けれども強くみがいてはいけません。適切なブラッシング圧で!