前回は「セルフチェックを心がけ、自分の苦手な部分を意識する習慣」が大切であるという結論で終わりました。
今回は別のポイントで歯みがきの苦手を克服する話をします。
私は歯に歯ブラシをあてる力加減(ブラッシング圧)が重要だと思っています。
歯ブラシの動かし方と歯面に当てる角度
ブラッシング圧は重要ですが、歯ブラシの動かし方や歯面に当てる角度はどうなのかという疑問もあると思いますので、最初に簡単に触れておきます。
歯ブラシの動かし方の基本は細かい横磨きです。可能な限り1本ずつ、動かすストロークが大きくならないように磨くことが大切です。
基本は横磨きですが、場所によっては縦に動かしたりかき出すように動かしてもOKです。歯の面に歯ブラシの毛先が当たっていれば、どのような方向に動かしても歯垢は取れます。
歯が重なっているところなど、歯ブラシが入りにくい場所は歯ブラシの全面を使うのではなく部分的に使うことが有効です。
上の図のように、歯ブラシの先の部分だけ、付け根の部分だけあるいは側縁だけを使って磨くとブラシが届きにくい部分をきれいに磨くことができます。
次に歯ブラシの歯の面に当てる角度についてです。歯ブラシの毛先が歯面に直角に当たると歯垢が効率的におとせるので、直角に当てた方が良いと言われています。
また、歯周ポケットに毛先が入るように45°に当てるようにとも言われています。前回のブログでも書きましたが、奥歯の内側に歯ブラシを直角に当てるのはそもそも無理があります。
角度はあまり厳密に考えずに、直角~45°の間で当てるようにすればよいと思います。
もう一つ時間はどれくらいかけるのかという疑問もあると思います。
歯垢は歯ブラシで同じ場所を何回も磨かないと落とせません。3分~5分程度は必要だと考えます。10分程度磨くべきという考えもありますが、普通の方は5分程度で十分です。(高性能の電動歯ブラシなどでは2分でとてもきれいに磨けます。)
ただ、プラスしてデンタルフロスや歯間ブラシもすることが重要です。(参考 2017-11-12 やはり歯周病はなおらない? Part2)
歯ブラシをあてる力加減(ブラッシング圧)
では、今回のメインとなる歯に歯ブラシをあてる力加減についてです。
歯みがきの時に力を入れ過ぎるのは良くないと聞いたことがある方は多いと思います。
その通りで、力の入れ過ぎるは良くありません。理由は以下の通りです。
・力を入れ過ぎると歯ブラシの毛先が開いてしまいます。歯面は平ではなくゆるやかな曲面ですので、毛先が開いてしまうと毛先が当たらないところが出てきます。また、毛先が歯面に斜めにあたり逆に歯垢がおちにくくなります。
・強い力で大きな動きの横磨きをすると、歯肉を傷つけます。
・歯みがき剤には汚れを落とすため研磨剤が含まれています。力が強すぎると表面にエナメル質のない歯根の部分は削れてしまいます。(力がとても強いとエナメル質も削れます。)
簡単に言うと
「歯や歯肉にダメージを与えるが、あまりきれいに磨けない。」ということです。
では、なるべく軽くみがけば良いのでしょうか?
答えは NO です。
あまりにも軽い力だと歯垢を歯ブラシで落とすことができません。
日頃、掃除やいろいろなものの汚れを落とす時をイメージしてみてください。ある程度の力を入れないときれいに汚れをおとせないはずです。
歯みがきは歯ブラシの毛先で歯面をこすることにより、歯垢を落としていく作業なので、力が弱すぎると歯垢を落とすことはできません。
歯ブラシを歯面に当てる時の力をブラッシング圧と言います。適切なブラッシング圧は100~150gと言われています。(200gくらいまではOKです。)
これはブラッシング圧がとても弱い例です。
歯ブラシの毛先がふれている程度です。これでは歯垢を落とすことは難しいです。歯垢は硬くはなく柔らかいものですが、歯面には意外と強固にへばりついています。なでる程度の力では落とすことができません。
これは力を入れ過ぎている例です。歯ブラシの毛束がつぶれて毛先が開いているのがおわかりだと思います。これは「歯や歯肉にダメージを与えるが、あまりきれいに磨けない。」パターンになります。
これが、適切なブラッシング圧です。毛束がつぶれておらず、毛先がわずかにたわんでいるのが確認できると思います。確実に毛先の力が歯面に伝わっています。このくらいの力加減で直角~45°くらいで歯ブラシを歯面にあて、小刻みに動かせば歯垢がきれいに落ちます。
歯ブラシの持ち方
細かいことですが、歯ブラシの持ち方も重要です。
このように5本の指で握りしめるように持つと、力が入りがちになりブラッシング圧が強くなりすぎることにつながります。
可能であればこのように指先で持つようにすると、力の入りすぎを防ぎやすくなります。
一般的には力を入れ過ぎて磨いている方が多いと思います。きれいに?あるいは短時間で?歯みがきをしようとすると力が入るのはある意味自然ではあると思います。
もちろん、歯ブラシの持ち方などを工夫して、力の入れ過ぎないようにして頂きたいと思います。
ただ、最近では力が弱すぎる方が意外と多く見受けられます。
力の入れ過ぎが良くないという情報が強くインプットされているからでしょうか。「なでるように磨いています。」という方は、概して力が弱すぎて歯垢が残っています。
また、出血を恐れて力をあえて弱くして磨いているケースもあります。
歯みがきの時に歯肉から出血するのは上の図のように、歯垢や歯石がついているところの歯周ポケットの内側のキズからの出血です。つまり、よく磨けていないところから血が出るのです。
(参考 2017-2-2 お口の健康がなぜ健康寿命に影響するか?part2)
よく磨けていないところを出血させないがために、なでるように磨いたのでは、歯垢が落とせませんので、残念ながら悪循環です。
仮に出血したとしても、1週間程度辛抱して磨いていると出血しなくなります。血が出ても適切なブラッシング圧で磨くこと心がけてください。
まとめ
前回と今回のまとめです。
・磨き残しがないように(一番大事なポイントです。)
①奥歯の内側
②上の一番奥の歯の外側
③利き腕側の前歯の外側
④下の前歯の外側
⑤奥歯と前歯のさかい目の内側 など
(磨くときの癖によって、磨き残しがないように)
・歯ブラシの動かし方
基本は細かい横みがき
場所によっては縦に動かしたりかき出すように動かしてもOK
(歯ブラシの毛先を部分的に使うことも有効)
・歯ブラシを当てる角度
直角~45°の間
・ブラッシング圧
100~150g(~200g)
(強すぎず、弱すぎず)
・出血するところを避けない
血がでるところは磨けていないところ
・ブラッシング時間
3~5分程度
(プラスしてデンタルフロスもしくは歯間ブラシも使う)
歯みがきは一生の習慣です。(歯がある限りではありますが)
ある程度の時間と手間がかかることではありますが、ご自身の健康を保つために必要な大切な習慣の一つです。なるべく効果がある方法で実践していただきたいと願っています。
歯みがきの時は必ずフッ素入りの歯みがき剤を使うことをお勧めします。(以下のブログを参考にして下さい。)