私は今年で65歳を迎えます。高齢者の仲間入り。(高齢者の定義は種々ありますが、総務省などの統計では、65歳以上が高齢者となっています。)
あと何年働けばよいか?何歳になったら引退しようか?こんな考えが、頭をよぎる年齢になりました。
何歳まで働くかは、各個人の諸事情によるはず。
今回は高齢者の就労について考えてみました。
何歳まで働いているか?
一般的には、何歳くらいまで働いているのでしょうか?
以前紹介した「本当の定年後」では、総務省「国勢調査」によれば、2020年における70歳男性の就業率は45.7%と。
下の表は令和2年(2020年)国勢調査就業状態等基本集計結果概要から作成しました。
労働力率とは
15 歳以上人口(労働力状態「不詳」を除く。)に占める労働力人口(調査期間中の休業者および完全失業者も含む)の割合。
70~74歳男性では44.5%と半数近くが就労している。女性も27.0%と、5年前の調査の19.9%と比較すると、けっこうな増加傾向が見てとれます。
二昔前?の60歳で定年。以降は悠々自適という構図は、微塵もないですね。
令和元年に内閣府から発表された、高齢者の経済生活に関する調査の結果も見ていきます。
この調査は60歳以上の男女1,755人を対象に実施されました。
この調査の中に「何歳まで収入を伴う仕事をしたいか(又は、したかったか)」という質問が。
「仕事をしたいとは思わない」と「不明・無回答」を除いて考えると、少なくとも65歳くらいまで働きたい人は84.5%。(①+②+③+④+⑤)
少なくとも70歳くらいまで働きたい人58.9%。(②+③+④+⑤)
少なくとも75歳くらいまで働きたい人37.2%。(③+④+⑤)
少なくとも80歳くらいまで働きたい人25.3%。(④+⑤)
令和の時代において、高齢者の就労実態と高齢者の就労希望に大きな隔たりはないと感じます。
高齢者になっても働くメリット1
高齢者になってなっても働くメリット、というよりは働く理由の方が適切かもしれません。
いうまでもなく収入を得るため。
前項でも紹介した、高齢者の経済生活に関する調査での、「仕事をしている理由」の結果が以下。
収入を得るため、が約半数でトップ。理由は複数ある場合も多いと思いますが、択一回答の結果です。至極当然の結果とも。
一口に収入を得るためといっても、事情は様々なはず。生活費を稼ぐために、働かざるおえない方もいるでしょう。余裕のある生活を目指して、就労を選択している場合も。
令和5年度の老齢基礎年金の満額は、795,000円との検索結果が。月額66,250円ですね。厚生年金に加入されている方は、もちろん+αがありますが、私のようにほぼ国民年金のみとなると、この額です。
やはり収入を得るために、ある程度は働く必要はありそう。
高齢者になっても働くメリット2
もう一つの高齢者になってなっても働くメリットは、ズバリ健康寿命が延びる。
つまり自身の介護予防になることです。
2024-2-20 歯科医がおしえる健康寿命の延ばし方
でも説明したフレイル予防の三つの柱です。
フレイルは加齢により全身的な衰えが見られる状態で、要介護状態一歩手前です。健康と要介護状態の中間地点。フレイル予防は介護予防につながるので、フレイル予防≒介護予防として、話をすすめます。
フレイル予防の三つの柱のうちの、「3社会参加」に「就労」の文言が。つまり高齢者になっても働くことは、自身の介護予防になると考えられている。高齢者の就労が、心身の健康に好影響についての報告が多数あることによります。
昨年10月発表された、東京都健康長寿医療センターからの研究結果をぜひご覧になってください。
フレイルであっても、働くことは身体機能を維持し要介護リスクを低減することが明らかに
都内の 65-84 歳の男女 6386 名を対象に、3.6 年間の追跡研究の結果。
フレイルでない高齢者はフルタイムであれ、パートタイムであれ、働くことが新規要介護認定全体のリスクを抑制することがわかりました。一方、フレイルであっても、フルタイムで働くことにより身体機能の維持を介して新規認定を抑制できる可能性が示唆されました。
独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所2023年10月26日プレスリリース
なんと健康な人たちだけでなく、加齢による衰えが目立つフレイルの人までが、就労による介護予防効果があるという結論にいたっています。
過去の同じような研究結果では、健康な人が働いているから、介護予防につながっているように見えるだけではないかと、解釈できる研究もあったようです。
しかし東京都健康長寿医療センターの研究では、健康であるとは言い難いフレイルの方でも、就労が介護予防につながっているという結果。とても意義がある研究結果です。
高齢者の経済生活に関する調査での、「仕事をしている理由」で
23.5%の方が、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と回答。
わかっている方は、わかっていますね。
「小さな仕事」が日本社会を救う?
働くといっても、必ずしもフルタイムで働く必要はありません。パートタイムであっても働くことは、高齢者にとって多くのメリットがある。
健康的な観点ではなく、経済的な観点から、高齢者の就労実態から就労メリットなどを示しています。
- 現役時代に仕事を通じて貯蓄に励み余生を悠々自適に過ごす人
- 生活費を稼ぐために年を取っても必死に働いている人
このような二極化の定年後は典型ではないと。
定年後はダウンサイジング(様々なことを小型化すること)した職(「小さな仕事」)につき、慎ましく(ある程度余裕のある)幸せな生活をおくる人。このような人たちが、現在の日本の高齢期の典型であることを、著者はデータが、物語っていると。
超高齢化社会の日本では、社会的・経済的観点から支えられる側と支える側のとのアンバランスが問題になっていることは、耳にタコでしょう。
だからといって、多くの高齢者が支える側にまわるというのは、現実的とは言えません。
しかし「小さな仕事」に従事することにより、社会的に支えられない側になるだけでも、大きな貢献であると。
定年後から健康寿命までは無理なく仕事を続け、年金に頼らず自分でその支出を賄えるだけの収入を稼げば、日本の経済は十分に持続可能なのである。
本当の定年後「小さな仕事」が日本社会を救う
高齢者になっても働くことは、自身の豊かで健康的な暮らしに直結するだけでなく、どうやら日本経済のお役にもたてるようです。
おまけ
今年で65歳を迎える私自身が、何歳まで働くか?
三十数年前に歯科医院開業した当時から、様々な事情により、75歳まで元気で働くことを目標とし、健康・体力の維持に努めてきました。
今のところ、目標に向かって順調に進捗していると、自身では評価しています。
今回のブログ構想を温めている段階で、改めて自身の歯科医師引退年齢を考えてみました。(実際はその前から、何となく思うところはありましたが)
とりあえずは80歳を目標とします。もちろん段階的に「小さな仕事」への移行は考えています。
かつて一緒に仕事をしていた父は、75歳で引退しました。父の世代と比較して、平均寿命だけでなく健康寿命も大幅な延びがあります。無理のない目標では。
ただ患者さんに来院していただかなければ、話になりません。
今後も健康・体力の維持に努めるだけでなく、歯科医療・保健に関する知識と技術のアップデートにも取り組んでいきます。