前回のブログでは、「むし歯菌(ミュータンス菌)が感染しはじめる時期」についての話をすると予告しましたが、予定を変更いたしました。
私が歯科校医をしている白金小学校では、毎年6月の「歯と口の健康週間」に4年生を対象とした歯科講和を実施しております。
6時間目の約40分間、パワーポイントのスライドを使って「歯を大切にしよう!~一生自分の歯で食べるには~」のタイトルで、むし歯と歯周病予防の大切さについて話しをします。
この後、児童たちには宿題が出され、今回の講和で聞いた内容や質問を書いて提出します。6月末には養護教諭がこの質問が書かれている用紙を、私のところに持ってきてくれます。この質問に答えていくことが、毎年の私の夏休みの宿題になります。一学年の児童数は約90名です。全員が質問を書いているわけではないのですが、大半の児童は質問をしてくれます。質問があるということは、それなりに理解をして興味を持って聞いてくれたことになりますので、質問が多く出るということは、喜ばしいことではあります。
しかし、一人ずつに回答していくことは、何年やっても骨の折れる作業です。ただ、やりがいも感じております。今年もすべての質問にたいして回答を出し終わりましたので、今回のブログではその中のいくつかを紹介させていただきます。
質問は要約しました。
回答は原文のままです。(実際にはつけているフリガナは省略いたしました。)
また、歯科講和の内容は以下のブログにも一部記載がございますので、参考にしてください。
2017-3-3 歯みがきができていれば、むし歯にならないか?
質問1 むし歯はなおる確率が高いか低いか?
初期むし歯はなおる可能性のあるむし歯と説明しました。
このことに関する質問だと思います。
回答1
歯科講話では、初期むし歯はなおる可能性があると話しました。初期むし歯とは歯の表面が白くなったり、奥歯のみぞが黒くなったりしているけれど、穴がまだあいていないむし歯のことです。
再石灰化より脱灰の方が多くなるとむし歯になります。間食が多いとか、歯みがきをわすれてねてしまうなど、ふだんの生活のしかたがあまりよくないとむし歯になります。
初期むし歯になっているのに気づいたとします。今までの生活のしかたを反省して、フッ素入りの歯みがき剤とつかってかならず歯みがきをしたり、おやつの食べかたに気をつけたりすれば、なおる可能性はとても高くなります。反対に反省をしないで、今までと同じ生活のしかたをしているとむし歯になってしまいます。
高いか低いかはその人の心がけしだいです。
質問2 歯みがきをちゃんとしていればフッ素を使わなくてもよいか?
むし歯を予防するためにはフッ素入り歯みがき剤を使ってくださいを話しました。
フッ素を使わないとむし歯予防ができないのか疑問に感じたのだと思います。
回答2
むし歯予防の基本は、歯みがき、甘いものの制限、フッ素をつかうことの三つです。ただ、どれもひとつだけではむし歯予防はむずかしいです。
歯科講話で話をしたように、歯みがきをきちんとやっていても、脱灰が再石灰化より多くなるむし歯になってしまします。脱灰を少なくするためには、甘いものの制限をしたり、おやつの食べかたに気をくばります。再石灰化を多くするためにフッ素入りの歯みがき剤をつかいます。
きちんと歯みがきをしておやつの食べかたに気をつけていればむし歯にならないかもしれません。しかし、フッ素入りの歯みがき剤をつかったほうが、より確実にむし歯予防ができます。
WHO(世界保健機関)など世界の多くの専門機関が、適切におこなわれるフッ素の利用は、安全で、もっとも有効なむし歯予防方法と認めています。心配せずに、フッ素入りの歯みがき剤をつかってください。
質問3 寝る何分前までお菓子を食べてよいか?
寝ている間は唾液が出ないので、寝る前に飲食をしてしまうと寝ているときに脱灰がおこり、とてもむし歯になりやすくなると話しました。
夕食を食べてから寝るまでの間にお菓子を食べる習慣はもちろん良くないです。ただ、時としてお父さんとかのお土産で食べる場合もあるかもしれません。
回答3
ねる何時間前であればおかしを食べてよいという決まりはありません。1時間前でも10分前でもねる前に歯みがきをすればよいと思います。
ただ、夕食をすませてからねるまでの間におかしを食べるのはどのような時でしょうか。ねる前におかしを食べるのは良い習慣とはいえません。むし歯になりやすくなるだけではなく、肥満の原因にもなります。
夕食をしっかりと食べれば、ねる前におなかがすくことはないはずです。どのような時におかしを食べたくなるのか自分で気をつけてみてください。そしてどうすれば、そうならないかを考えてみてください。
どうしても、おかしを食べる必要があるのならば、歯みがきをよくしてからねましょう。ときどき(お父さんのおみやげ?)であればかまわないと思います。
質問4 電動歯ブラシと普通の歯ブラシどちらが良いか
電動歯ブラシの話はしておりませんが、毎年必ず出る質問ではあります。
回答4
電動歯ブラシはふつうの歯ブラシにくらべて、みじかい時間できれいに歯垢(プラーク)をおとすことができます。ただ、電気製品なのでふつうの歯ブラシに比べてかなり高い値段です。
電動歯ブラシがきれいに歯垢をおとせるといっても、ふつうの歯ブラシといっしょで歯にうまくブラシをあてないと歯垢はおとせません。つまりうまく使わないとふつうの歯ブラシと同じようにみがきのこしがでます。またつよくあてすぎると歯や歯肉をきずつけることがあります。
歯ブラシを使って歯垢をきれいにおとすのは、実はとてもむずかしいことです。歯ブラシの歯の面へのあて方、手のうごかし方や指先の力の入れ方などがうまくいかないと、きれいにはみがけません。このようにうまく歯みがきをしようと努力することは、脳へ刺激をあたえ、いろいろなことが器用にできるようになることにつながります。歯みがきの基本を身につけることはとても大切なことです。
電動歯ブラシを使うことは悪いことではありませんが、先生は電動歯ブラシではなくふつうの歯ブラシを使ってもらいたいと考えています。
質問5 先生は子供のころむし歯はあったか?
歯科講和の内容とは関係なくこのような質問もたまにあります。
回答5
先生のお父さんは同じく歯医者さんでした。小学生のころは1日2回歯みがきをしていましたが、むし歯に何本かなって、お父さんに治療をしてもらいました。
脱灰と再石灰化という言葉が日本で広まりだしたのは約20年くらい前からです。先生が子供のころはだれも知りませんでした。もしかしたら脱灰が多くなるような生活をしていたかもしれません。それにフッ素入りの歯みがき剤もありませんでした。
〇〇さんはどのようにしたらむし歯にならないかは、理解できたと思います。規則正しい生活をして、いつまでも健康な歯と歯肉をたもつようにして下さい。
二学期も始まりましたので、これらの回答も宿題の用紙とともに児童に返却されたと思います。