歯を失う最大の原因である歯周病の話題。

歯周病は慢性の病気。つまり治ることはない。
歯周病の治療は、治癒(治ること)を目指すのではありません。重症化しないようにコントロールしていくことを目標として継続します。
治療を継続していくには、病気の把握が大切。そこで今回のタイトルである、歯周病の検査がクローズアップされます。
歯科医院で歯周病治療(クリーニングを含む)をされたことがある方であれば、だれでも経験がある歯周病検査について考えていきます。
歯周病の検査は何をしている?
「少しチクチクしますよ」と言ってはじまる歯周病の検査。具体的に何をして、何を調べているのでしょうか。
歯周病は歯肉に炎症がおきて、最終的には歯槽骨が溶けて、歯を失うことにつながる病気です。
厳密には歯周病は大きく分けて、歯肉炎と歯周炎の二つに分けられる。
詳しくは 2017-10-24 やはり歯周病はなおらない? Part1 を参考に。
今回は歯肉の病気である歯周病(歯肉炎と歯周炎)として、話をすすめていきます。

上図の左側が正常な状態。歯肉は薄いピンク色で引き締まっており、歯槽骨は溶けていません。
右側の歯周病では、歯肉が赤く腫れ歯槽骨が溶けています。
歯肉が炎症をおこすと、最初に歯肉が赤く腫れる。さらにこの状態が続くと歯と骨をつないでいる歯根膜という組織が破壊され、歯周ポケットができる。
そこで歯周ポケットの深さが重要な検査項目に。

上の写真のように、2ないし3mmのメモリがついた歯科用プローブといわれる器具を使用し、歯周ポケットの深さを測ります。
これがチクチクする原因です。
一つの目安として
- 3mm以内 健康
- 4~6mm未満 歯周病
- 6mm以上 進行した歯周病
それともう一つ重要な検査項目があります。
それは歯周ポケット測定をした時の、出血の有無。

歯周ポケットがある程度深い場合は、ほぼ例外なく出血します。出血する場所は歯肉の外側ではなく、内側から。
歯周ポケットが浅くても出血があると、歯周病の疑いが十分ある。 歯周ポケットが3mm以内で、検査時に出血がなければOK!
歯周病の検査
- 歯周ポケット測定(プロービング) PD(Probing Depth)
- プロービング時の出血 BOP(Bleeding on Probing)
この二つが重要な歯周病の検査項目です。
それ以外には
- プラーク(歯垢)付着状況
- 歯の動揺度(ぐらつき) など
があります。
なぜ血が出るのか?
歯周ポケット測定(プロービング)をしても、健康な歯肉では出血はありません。なぜ歯周病あるいはよくコントロールされていない歯肉からは出血するのでしょうか。
その理由は、歯肉の内側に傷があるからです。

冒頭の歯周病の図の一部を拡大してみたのが、上図の右側。
歯の面に付いている細菌(歯周病菌を含むすべての細菌)から出る毒素や酵素により、歯肉の内側に傷ができます。この傷を微小潰瘍といいます。

歯肉の内側の傷がある場所を、歯周ポケット測定(プロービング)すると、器具の先が傷に触れる。すると出血がおこる。これがプロービング時の出血(BOP)です。
歯周ポケットがある程度深い場合は必ずといっていいほど出血します。
しかし歯周ポケットが浅いにもかかわらず、出血する場合は、ごく初期の歯周病といえる。
このようにプロービング時の出血(BOP)の有無は、歯周病の判定には欠かせません。
別の検査法もある
歯周ポケット測定(プロービング)以外にも、歯周病の検査があります。
それは唾液検査。
この検査は唾液中のヘモグロビン量を測定する検査です。

ヘモグロビンは赤血球に含まれる赤い色素成分で、血色素とも呼ばれます。唾液腺から分泌される唾液にはヘモグロビンは含まれていません。
お口の中から採取した唾液に、ヘモグロビンが含まれている場合は歯肉からの出血が一番に疑われます。
一言でいうと唾液検査は歯周病の検査として、適切かつ有力な検査方法。
唾液中に
- ヘモグロビンがほとんど検出されない→健康な歯肉
- ヘモグロビンが少し検出される→初期の歯周病
- ヘモグロビンが多く検出される→やや進行した歯周病
この検査法の最大の利点は、「チクチク」しない。痛くない。味のないガムを噛んで、唾液を容器に出すだけなので。
この検査方法は大腸がん検診で用いられている、便潜血検査が応用されています。
分析装置及び検査試薬は全く同じものが使用できます。
毎年芝歯科医師会が、新橋SL広場で実施している「唾液でカンタン歯周病チェック」は、まさにこの唾液検査。

この唾液検査による歯周病の検査は、通常の保険診療では行われません。しかし将来的には歯周病をスクリーニングするツールとして有力視されています。
特に初期の歯周病では、出血の有無が重要。
ごく初期には歯周ポケットはそれほど深くはならない。歯根膜が破壊され歯周ポケットが深くなるには時間がかかる。つまりタイムラグがあるからです。
もし歯みがきして血がでたら、どうする?
歯みがきをした時に、歯ブラシに血がついていた
歯みがきをした時に、ゆすいだら血が混じっていた
これは歯周病のサインです。
歯ブラシで歯肉が揺さぶられ、内側にある傷からの出血です。

でも中には歯ブラシで歯肉に傷をつけて出血したと思われる方もいらっしゃいます。 ここでこの後の行動に差が生まれます。
歯肉からの出血が、歯周病のサインと考えれば、よく歯みがきをします。
ところが歯ブラシで傷をつけたと判断すると、逆に歯みがきを控えてしまいます。出血した時に、痛みを感じる場合もあり、傷つけてしまったと解釈するのもうなずけますが、違います。
歯みがき時に強いブラッシングをすると、歯肉にすり傷ができます。
手や足に浅いすり傷をした時を思い出してください。よほど深くなければ、表面は多少の赤味がありますが、目に見えるような出血はほとんどとありません。
歯肉のすり傷も出血はほとんどないといって差し支えありません。ご本人も傷つけている認識はありません。
つまり歯ブラシでできたすり傷から、目に見えるような出血はないと思って間違いはない。
歯肉からの出血あるいは唾液に血が混じる。これは歯周病の重要なサインです。これを見逃す手はない。
歯科医院に、「少しチクチク」する歯周病の検査を受けに来ていただくことを、ぜひご検討ください。