今回は昨年に引き続き、小学校で行っている歯科講和を受けての小学4年生からの質問に対する回答を紹介していきます。

毎年6月の「歯と口の健康週間」に歯科校医をしている小学校の4年生を対象に歯科講和を実施しております。

6時間目の約40分間、パワーポイントのスライドを使って「歯を大切にしよう!~一生自分の歯で食べるには~」のタイトルで、むし歯と歯周病予防の大切さについて話しをします。

この後、児童たちは講和で聞いた内容や質問を書いたプリント提出します。

私はこのプリントを読んで、質問に回答して返却します。1学年は100名弱ですので、毎年かなりハードな作業になります。

歯科講和でこのような流れをとるようになって約10年経ちますが、毎年新たに頭を悩ますような質問が必ずでます。今年もなんとか回答を書き終えることができましたので、面白そうなものをピックアップしました。

 

質問は要約して記載しました。

回答は原文のまま記載しております。(実際にはつけているフリガナは省略いたしました。)

 

質問1 むし歯になりかけたら、むし歯になるまで何日かかるか?

初期むし歯(CO)はしっかり再石灰化すると治りますが、脱灰が継続するとむし歯になって治療が必要になります。学校健診でCOと言われたのでしょうか。心配になったのかもしれません。

回答1

脱灰が再石灰化より多くなるとむし歯になるということを歯科講話で話をしました。脱灰のほうがすごく多いと早くむし歯になり、少しだけ多いとゆっくりむし歯になるはずです。

たくさんの小学生の歯の表面を特殊な機械で光をあてて観察した研究があります。なんともなかった歯が3ヶ月後には目でははっきりとわからないが初期むし歯になっている人が何人もいました。ぎゃくに初期むし歯だった歯が3ヶ月後に治っていた人もいました。
あるていど変化がみられるのは3ヶ月くらいだと思います。初期むし歯は3ヶ月くらいするとむし歯になっていてもふしぎではありません。もちろんもっと時間がかかってむし歯になる場合もありますし、脱灰がとても多い生活をしていると、もっと早くできてしまうかもしれません。

 

質問2 カルシウム以外にも歯に必要なものはあるか?

何と答えようか迷いました。歯は脱灰されるとカルシウムやリン酸が溶け出します。しかし、唾液中のカルシウムやリン酸を再び取り込んで、溶けた部分が修復されます。これを再石灰化といいます。

カルシウムがむし歯を防いでくれると理解したのかもしれません。ただ、食事でカルシウムをたくさんとっても、むし歯予防にはつながりません。このあたりの説明を回答としました。

回答2

歯は表面のエナメル質といいカルシウムとリン酸の結晶でできています。人間の体の中で一番かたいのがこのエナメル質です。
唾液にはカルシウムとリン酸がふくまれています。飲食の時に脱灰して歯の表面のカルシウムとリン酸が少しうしなわれても、飲食をしていない時には、唾液中のカルシウムとリン酸によって修復されます。これを再石灰化といいます。
カルシウムだけでなく、食事でとった栄養が歯に直接とりこまれるわけではありません。あくまでも、唾液中のカルシウムが歯にとりこまれるのです。
では、カルシウムをたくさんとると、唾液中のカルシウムがふえるのでしょうか。唾液は血液の成分からつくられます。血液中のカルシウムの濃度はいつも同じくらいに(8.5~10.4 mg/dl)にたもたれています。食事の影響をまったく受けないわけではないと思いますが、カルシウムをたくさんとっても唾液中にはそれほど多くはなりません。
そこで大切になるのがフッ素です。フッ素は再石灰化をさかんにします。食べもの中にもフッ素はふくまれていますが、むし歯予防には十分な量ではありません。フッ素入りの歯みがき剤を使って歯みがきをすることが、むし歯予防のポイントになります。

 

質問3 コーラやポカリには何gくらいの砂糖が入っているか?

スポーツドリンクもジュースと同じくらい砂糖が入っているので、むし歯の原因になる飲み物であると話をしました。

回答3

のみものに入っている成分は、作っている会社が公表しています。たとえば、コカ・コーラでは100ml中の炭水化物11.3gとあります。原材料名の中に「糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)」と書いてあります。炭水化物11.3gのほとんどが果糖ぶどう糖液糖と砂糖だと思います。果糖ぶどう糖液糖とは何でしょうか。果糖ぶどう糖液糖とはさつまいもやじゃがいも、トウモロコシのでんぷんから作られた食品添加物で、ブドウ糖と果糖からなります。ブドウ糖も果糖も砂糖のなかまで、むし歯の原因になります。
ではスポーツドリンクではどうでしょうか。たとえば、ポカリスエットでは100ml中の炭水化物6.7gとありました。原材料の中には「砂糖、ぶどう糖果糖液糖」と書いてありましたので、これも炭水化物のほとんどが砂糖とぶどう糖果糖液糖になるはずです。
歯科講和では砂糖の量は同じくらいといいましたが、実際にはスポーツドリンクに入っている砂糖などの量は、コーラの約半分でした。ただ、むし歯の原因になるのみものには変わりはありません。CMのフレーズにのって、のみすぎないように気をつけてください。

 

質問4 歯周病で違う病気になった人はどれくらいいるのか?

歯科講和で配布したプリントには

「歯肉から血が出るのは、歯周病によってできた歯周ポケットの内側にキズがあるからです。この歯周ポケットの内側のキズからお口の中のばい菌が血液中に入りこみます。

歯周病があると、いつもお口の中のばい菌が血液の中にいることになります。このことが歯周病が全身のさまざまな病気にかかわっている理由です。」と書きました。

お口の中の病気が本当に全身の病気の原因になるのか不思議に思ったのかもしれません。

回答4

歯科講和の時のプリントにも書きましたが、糖尿病、脳卒中、認知症、心筋梗塞、がんなどの病気は、生活習慣病といわれています。生活習慣病はウイルスや細菌が原因ではなく、ふだんの生活のしかたによってなる病気です。
生活習慣病は一つのことが原因ではなく、健康のために大切なことである6項目が複雑に関係してなる病気です。
①バランスのとれた食事
②運動の習慣
③適切な休養
④たばこを吸わない
⑤お酒をのみすぎない
⑥歯周病をふくめた、歯と口の健康
 けっして、歯周病だけが原因で病気になるわけではありません。むかしは歯や口の健康が全身の健康に影響していることがわかりませんでした。最近、さまざまな疫学研究によって歯と口の健康が生活習慣病の一つの原因になっていることがわかってきたのです。
 
疫学研究とは
病気や健康に関するいろいろなことを調査し、その原因などを明らかにする科学研究です。病気の原因をさぐり、予防法や治療法が有効かどうかたしかめたりするのに、また環境や生活習慣と健康とのかかわりを明らかにするために、疫学研究はかくことはできません。

 

質問5 どうして歯周病などのようなものができるようになってしまったのか?

この質問も何と答えればよいか非常に悩みました。歯周病(正確には歯周炎)は治らない病気と紹介しました。治らない病気の上に全身の病気の原因にもなるとは、とんでもない病気だと感じたのでしょうか。

回答5

「どうして、歯周病などのものができるようになってしまったか?」という質問ですが、どのように答えたらよいか迷いました。
原因ということであれば歯周病菌ということになります。歯肉炎は歯垢の中のばい菌のちからで歯肉に炎症がおきたものです。歯肉炎が長くつづいていると歯と歯肉の間に歯周ポケットという溝ができてきます。歯周病はこの溝の中に歯周病菌という特殊なばい菌がふえることによっておきます。
それとも、もっと根本的なことでしょうか?むし歯の原因菌であるミュータンス菌は砂糖などから酸を作り歯を脱灰してむし歯を作るだけではありません。ミュータンス菌がもつグルコシルトランスフェラーゼという酵素で砂糖などから不溶性グルカンというネバネバした物質を作ります。これが歯の表面に歯垢がたくさんつく原因になります。そして、歯肉炎が継続することにより歯周病を起こします。つまり、歯周病は砂糖などの糖質を多くとるようになったことで多くなった病気ともいえます。また、肉などのタンパク質も料理することで、タンパク質の分子が小さくなることにより、おいしくなる反面、お口の中のばい菌のえさにもなります。これは歯周病菌がふえやすくなるということです。
野生の動物には歯周病はないといわれています。しかし、ペットの犬では歯周病で歯を抜くことがよくあると聞きます。おいしい?ペットフードが原因なのかもしれません。

 

回答を読み返してみると、小学校4年生には少し難しすぎるかなとは思います。数年前に養護教諭にこのような回答で大丈夫かと聞いたことがあります。

多少難しくてもご両親と共に読んで理解してもらえばよいので、大丈夫だという話をしていただきました。

今回も理解しづらいところは、お父さんやお母さんに助けてもらいながら、理解してもらいたいと思います。そして、今後の健康増進に役立ててほしいです。