歯周病と糖尿病の負のスパイラル

糖尿病とむし歯、歯周病は同じ原因ということで、前2回は話を進めました。しかし、実際に直接的にかかわっているのは歯周病糖尿病です。

歯周病と糖尿病がどのように影響を及ぼしあいながら、負のスパイラルへと突き進んでいくかという話をします。

歯周病は歯を失う最大の原因です。

糖尿病は全身の血管にダメージを与え、様々な重篤な病気の原因になります。

どちらも中年期以降の私たちを苦しめる原因になる、とても一般的な病気です。どちらか一方でも厄介ですが、両方の病気が互いに影響しあい悪化していく傾向があるのです。

糖尿病診療ガイドライン2016 13糖尿病と歯周病には

糖尿病が歯周病を悪化させるメカニズムとして以下の三つが挙げられていました。

①血糖値が高くなると脱水傾向になることにより唾液が少なくなり、お口の中の清掃性が悪くなり歯肉の炎症を起こしやすい。

②高血糖により白血球の殺菌能などの機能が弱くなり、歯周病菌の対する抵抗力が低下する。

③過剰な血液中のブドウ糖(血糖)とタンパク質が結びついてできるAGE(終末糖化産物)が、歯肉の基となる重要な分子であるⅠ型コラーゲンなどの性質を変化させる。

かねてより歯周病は糖尿病の「第6の合併症」と言われてきました。

糖尿病→歯周病

つまり、糖尿病が歯周病に悪影響を及ぼすということです。

近年、この逆で

歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすといわれるようにもなりました。

同じく糖尿病診療ガイドライン2016 13糖尿病と歯周病では

炎症を起こした歯肉で*1炎症性サイトカインという物質がつくられ、これが血液中をめぐることにより*2インスリン抵抗性が上がり、血糖値が上昇しやすくなると書かれています。

*1炎症性サイトカイン-サイトカインは細胞から分泌されるたんぱく質で、細胞どうしが連絡をとりあう信号のようなもの。炎症性サイトカインとは、サイトカインの一種で、カラダの中の炎症反応を促進する働きを持つ。

*2インスリン抵抗性-インスリンは十分な量が分泌されているけれども、効果を発揮できない状態。

2017-2-2 お口の健康がなぜ健康寿命に影響するか?part2

「歯磨きをした時などの出血は、この歯肉の内側の微少潰瘍(びしょうかいよう)からの出血です。」と書きました。つまり、炎症を起こした歯肉の内側には小さなキズが出来ており、歯みがきなどで歯肉が揺さぶられるとこのキズから出血します。逆にこのキズから歯周病菌などの細菌、細菌の出す毒素や炎症によってできた炎症性サイトカインが血液中に入り、全身の血液中をめぐることになります。

このようにお口の中の細菌や毒素などが血液中を流れること(歯原性菌血症(しげんせいきんけつしょう))が、歯周病が全身の病気に影響を及ぼす原因です。ただ、糖尿病に関しては細菌そのものより歯周病が起きている部分で作られた炎症性サイトカインが原因となっているようです。

よって

歯周病→糖尿病

という逆方向もあるということです。

先の糖尿病学会ガイドラインにも

「2型糖尿病(一般的な糖尿病)では歯周治療(歯周病の治療)により血糖が改善する可能性があり、推奨される。」と記載されています。

一部の研究では歯周治療は血糖コントロールに効果がないというものもあります。これに関してガイドラインでは、歯周治療の効果がないといわれている論文は以下の二つの点で問題があると指摘しています。

・歯周病が十分に改善されていない。(治療、コントロールが十分でない。)

・肥満が原因の炎症が歯周病による炎症をマスクしている可能性が高い。(以下の説明)


「肥満が原因の炎症が歯周病による炎症をマスクしている」というのはどのような状態かというと

体に蓄積された脂肪細胞、特に内臓脂肪から、炎症を起こした歯肉からでる同じ炎症性サイトカインという物質がつくられます。これが肥満が原因の炎症です。

つまり内臓脂肪レベルが高いメタボリックシンドロームの人は、歯周病が原因の炎症性サイトカイン以上に内臓脂肪からの炎症性サイトカインが出るので、歯周治療の効果が無いように見えるということです。

当たり前ですが、血糖値の改善には食事療法や運動が欠かせません。


歯周病と糖尿病がお互いに悪影響を及ぼしあう

歯周病⇔糖尿病

という図式がある程度はご理解いただけるかと思います。

さて、歯周病が進行していくとどうなるでしょうか?

冒頭に書きましたが歯周病は歯を失う原因のトップですので、次々と歯を失うことになります。

2017-1-15 お口の健康がなぜ健康寿命に影響するか? part1

「歯を失っていくと食事がしにくくなる。実際には、かみにくい食品群を避け、その代わりに穀類などのかみやすい食品を食べる割合が多くなり、たんぱく質・ミネラル類・ビタミン類・食物繊維の割合が少なくなり、栄養のバランスが崩れる。」と書きました。

つまり、糖質が中心の食生活になりやすいということです。

言うまでもなく、糖質は血糖値を上げます。

糖質中心の食生活は血糖値を上げやすく、すでに糖尿病の患者さんは病状の悪化、糖尿病予備軍の人は糖尿病へと進んでいくことになります。

このように歯周病と糖尿病はお互いに悪影響を及ぼし合いながら、私たちのQOLを低下させていきます。

歯周病を予防するには適切なセルフケアが大切です。糖尿病を予防するには適切な生活習慣(食生活、運動など)を心掛けことです。

しかし、ここでとても重要なことがあります。

それは専門家(歯科医師、医師など)の適切な指導、診察を受けながらセルフケアや生活習慣の改善を行うということです。

歯周病に関して言うと、ある程度進行してしまうとセルフケアだけではよくなりません。適切なプロフェッショナルケア(歯周病の治療やメインテナンス)が必須です。

糖尿病に関して言うと、血糖値のコントロールは大切ですが、最も考えなければいけないのは合併症を予防することです。

2016年2月にノンフィクション作家である桐山秀樹さん(享年62歳)が心筋梗塞で亡くなりました。桐山さんは長年にわたり血糖値のコントロールに苦労してきましたが、糖質制限理論に出会ってから、血糖値のコントロールや体重の減量に成功しました。

自身の成功体験を書籍として出版したり、講演を行ったりしていたようです。その方が糖尿病の合併症と思われる心筋梗塞で急逝されたということは、周りにかなりの衝撃を与えたことが想像できます。

この事を受けて、糖質制限はとても危険な食事療法であるという記事もインターネット上では見られました。

しかし、長年に渡り糖尿病を患っていると、それなりに血管にダメージを受けていることも考えられます。仮に血糖値のコントロールが適切であっても、合併症への対応が不十分であったのではないかと推測している文章も目にしました。

本当のところはわかりませんが、後者の方が真実に近いのではないかと勝手に想像しています。

歯周病予防は以下のブログを参考にしてください。

2017-10-24 やはり歯周病はなおらない? part1

2017-11-12 やはり歯周病はなおらない? part2

2017-11-30 やはり歯周病はなおらない? part3

糖尿病に関することは

国立国際医療研究センター糖尿病研究センターのサイトがお勧めです。


おまけ

日本人の死因の第一位は男女ともがん(悪性新生物)で、死因の約30%を占めます。

これは高齢になればなるほど、がん細胞ができやすいうえにがん細胞を退治する免疫機能が衰えてくるので、高齢化が進んだ日本においては当然の結果で、今後もこの傾向は続くはずです。

先日、国立国際医療研究センター糖尿病研究センター植木浩二郎先生の講演を聞く機会がございました。植木先生によると糖尿病患者の死因の第一位はがんで、60%程度という統計もあるとの事でした。糖尿病は血管にダメージを与える病気なので、心筋梗塞や脳卒中などの病気が多いのではないかと考えていたので意外でした。

これは糖尿病ががんのリスクを高めるからです

糖尿病自体ががんの原因となるかどうかについて明確な理由はわかっていないようですが、

血液中のインスリン濃度が高いこと、がん細胞がエネルギー源とするブドウ糖(血糖)が高血糖状態のため豊富にあること、全身的に慢性炎症があることなどが挙げられています。

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